「何かを創り出す」教育

・・・GEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査では、〔1〕起業の準備を始めている人、〔2〕創業後42か月未満の企業を経営している人の合計が18~64歳人口100人当たり何人いるかをEEA(Early-Stage Entrepreneurial Activity)と定義し、各国の起業活動の活発さを測っている。OECD諸国のEEAを比較すると(第1-2-29図)、日本の値はハンガリーに続いて2番目に低くなっている。以上から、国際的に見ても、我が国の開業・廃業の水準は、活発とは言えない状況であることが分かる。

第3節 開業・廃業の経済全体への影響、中小企業白書 2007年版、経済産業省

上記の記述は2006年時点のものですが、実は平成24年(2012年)でも同じようなもので、それが下記のグラフになります。


GEM調査、一般財団法人 ベンチャーエンタープライズセンター VEC、引用

日本の起業家意識の低さ

とにかく日本は起業家意識の低さが顕著で、これはどうしたものかと考えされてしまいます。米国や中国に遅れを取っているのは、まぁわかるのですが、台湾や韓国にもほぼダブルスコアで負けています。無理矢理に結びつけるのも何ですが、昨今の大企業の “情報改ざん” 的な不祥事が頻発するのも、起業家精神の低さと関係している気がします。

企業というのは多少なりとも成功すると、その成功体験にとらわれ、新しいことに挑戦しにくくなります。これは人間集団の性であり、やむを得ない部分でもあります。したがって現実的には、古く非効率な企業は市場から撤退・退場し、その穴埋めを新しく動きの早い(速い)新興企業が行なう。これが経済社会のあるべき姿です。

起業や創業というものは、社会において常に行われていなければならないのですが、そうはなっていない。これは多分に学校教育が「何かを創り出す」ということを念頭に置いていないからだと思う。例えて言うなら、常に与えられた「羽目絵パズル」を解くことばかりに注意が向きすぎている。これからは「レゴ・ブロック」で何かを創り出す。この発想が必要です。

学校教育で「何かを創り出す」

何かを創り出す。この姿勢こそが、今の日本に必要であり、かつ決定的にかけている要素だと思う。資源がなく、なおかつ少子高齢化もどんどん進む日本で、創造力豊かな人材を次々と輩出しなければ、この国は間違いなく立ち行かなくなってしまう。これは自明の理だと思う。

最近は大学のゼミみたいなアクティブ・ラーニングも中等教育で採用され始めていますが、初等教育でもアクティブな教育として、例えばタブレットを使った「プログラミング教育」を株式会社DeNAが取り組んでいます。

2014年6月25日、佐賀県武雄市、当社、東洋大学の産官学連携の取り組みとして、公立小学校の1年生に向けた、プログラミング教育の実証研究を実施することを発表しました。・・・単に「未来のプログラマーになる人材を増やす」ということではなく、幼少期の言語教育のひとつとしてプログラミングを学習することが、日本の将来を担う子どもたちの可能性を広げることにつながるよう、尽力してまいります。・・・

公立小学校1年生へのプログラミング教育実施、株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

100%の児童が「プログラミングを楽しい、もっと学びたい」

この取り組みはかなり成功したようで、試行後なんと100%の児童が「プログラミングを楽しいと思い、もっと学びたいと感じた」と聞いています。もちろんDeNA社は子ども向けに扱いやすいプログラミングツールを提供したのですが、それを差し引いても、子どもたちは生き生きと実に個性的で面白いプログラム「作品」を生み出してきたそうです。

これはタブレットを使ったプログラミング事例ですが、それ以外でも、子どもたちは「何かを創り出す」ということに対して、非常にポジティブに行動します。ゆとり教育の是非が問われている昨今ですが、再度「詰め込み教育」に戻るのではなく、アクティブ・ラーニング的な「何かを創り出す」方向にカジを切って欲しいと思います。

もちろん「何かを創り出す」といっても非常に単純かつローレベルの事象もあるでしょうし、逆に高度過ぎる事例もあるでしょう。それに最も厄介なのは「正解」が無いケースも多いので、評価がとみに難しいという点です。アクティブ・ラーニングを採用すると、教員は今までと違ったスキルを要求され、しごく大変だと思います。

しかしその価値はある。教師の方々はアクティブ・ラーニングで相当に苦労するでしょうし、うまくいかないケースもたくさん出てくると思う。しかし仮にそうだとしても、その苦労に見合う価値は十分にある。私はそう確信しています。これからの日本人は何らかの意味で常に「アクティブ」でいなければいけないと信じるからです。

※参考資料:
ジグソーパズルvsレゴ®ブロック、ネット塾ジャーナル、2015年06月15日
ゆとり教育、Wikipedia、最終更新2016年05月11日
詰め込み教育、Wikipedia、最終更新2016年04月19日
グローバル教育 気になるキーワード VOL.4 アクティブ・ラーニング、G-Edu、コアネット教育総合研究所 所長 松原和之、2015年09月

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