iPad mini導入は始まりにすぎない

「iPad mini導入」は始まりにすぎない――同志社中学校がIT活用に挑む訳


※写真2・・・

メディアスペースは、生徒同士、あるいは生徒と教員の交流や啓発を目的とした学びの共有空間だ。近年、大学などを中心に導入されている「ラーニングコモンズ」とコンセプトがよく似ている(写真2)。・・・

生徒には一日の大半を過ごす決まった教室がない。その代わりに、所属するクラスごとに設けているのがホームベースだ。ホームベースには、ロッカーと机、クラスの掲示板があり、生徒は休み時間に次の授業で使う教科書をピックアップしたり、友人と談笑したりして過ごす。・・・


※写真6・・・

チャイムを鳴らさないノーチャイム制を採用。生徒は当日の時間割を表示するディスプレーや時計を見て行動する(写真6)。ディスプレーや時計は校内の至るところに設置している。反田教諭は「ノーチャイム制にすることで生徒が自発的に教室へ向かうようになった。生徒のタイムマネジメント能力養成につながると考えている」と話す。・・・

同校のiPad mini導入コンセプトである「iPad×ABC」に如実に表れている。「ABC」は「学びの基礎・基本」の意味に加え、
・Active Learning(能動的な学習)
・Blended Learning(学びにeラーニングを取り入れた学習)
・Collaborative Learning(協働的な学習)
のそれぞれの頭文字を表す。・・・

今後の展開について反田教諭は、「将来的には生徒が好きなデバイスを持って学校に来ることを想定しており、そのためにデバイスフリーの環境を整える必要がある」と話す。そのため、「学校運営からクラス運営、教材作りに至るまで、デバイス依存にならないように意識しながらiPad miniを活用している」(同)。
TechTargetジャパン 教育IT、2014年11月12日、引用

同志社中学校のiPad mini導入はすごい。普通、iPad導入は画面が大きめのiPad Airあたりを導入するのだが、ここでは単純に持ち運びしやすく、机の上を占領しないという理由で、あえて小型のminiを選んだ。特に中学生の場合、教科書やノート、ワークシート等の多くの教材を机に広げるので、タブレットは小さくていいだろうという発想です。

iPad導入コンセプト「iPad×ABC」

さらに、iPadありきではなく、iPad導入コンセプト「iPad×ABC」が振るっている。上手い具合に頭文字をとり、【A】Active Learning(能動的な学習)、【B】Blended Learning(学びにeラーニングを取り入れた学習)、【C】Collaborative Learning(協働的な学習)を、ICT教育指針としている。

【A】のActive Learningといえば、アクティブラーニング社の羽根拓也氏を思い浮かべます。羽根拓也氏はあのハーバード大学で優秀指導賞を受賞した経歴の持ち主で、現在、株式会社アクティ­ブラーニングの代表取締役社長を務めています。彼の言う「能動的な学習」とはこうです。↓↓↓


要は受け身タイプの学習はダメで、積極的な・体験的な・アクティブな学習が効果的なのだそうです。できうるならば、架空の情報ではなく本物の情報で(つまり現場で体験して)勉強するのが良い。つまり、体験型・プロジェクト型の学習あるいは講座が効果的ということです。このような体験学習は生徒・学生の心に響き、しっかり記憶に定着する。

このようなプロジェクト型学習は【A】Active Learningであると同時に、自然と【C】Collaborative Learningに移行しやすい。複数の仲間でプロジェクトを進めるスタイルだからだ。この【A】と【C】を結びつけるのが【B】Blended Learningなのでしょう。「iPad×ABC」というコンセプトでも、とりわけ核となるのは【A】と【C】です。つまり大切なのは、Active Learning(能動的な学習)とCollaborative Learning(協働的な学習)です。

羽根氏のActive Learningに戻ると、例えば授業の冒頭に、①先生が生徒に“なぜ?”というシンプルな質問をします。そして、②生徒同士で簡単にディスカッションをするようにし、その結果、③生徒の脳内でバーチャルな体験が起きる。この手順は実はかなり学習効果が高い。生徒は受け身ではなく、自らアクティブに学習するわけです。羽根さんいわく、このような「自分で考えてから、答えを聞く」ステップが重要なのだそうです。

学びの共有空間とノーチャイム制

とにかくいったん自分で考えさせる。このステップが重要で、同志社中学校の「iPad×ABC」教育も、この手法は押さえています。同中学では、学びの共有空間である「メディアスペース」を有効活用し、自ら学ぶスタイルを推奨しています。TechTargetの記事にもあるように、大学の「ラーニングコモンズ」(アカデミックコモンズ)に似ていますね。

また「ノーチャイム制」の導入で、生徒に自然と時間管理を身に付けてもらう工夫をしています。当日の時間割を示すディスプレー(モニター)も複数台設置し、生徒はそれを見て自ら授業参加や学習管理を行っています。単純ですが、これなど社会人になってからも役に立つ習慣になるのではないでしょうか。

特定のデバイスに依存しない

そして、同志社中学校の最大の良い点は、iPad mini導入は単なる通過点に過ぎないと考えている点です。つまり、将来的には、その時代に合ったデバイスに切り替えていく予定で、特定のデバイスに依存しない教育方針を掲げています。たぶん今後は、生徒が様々な電子デバイスを使い、アクティブに学習を進めていくシーンを想定しているようです。

先日(2014年11月11日)も新型ノートPCとして画期的な「Chromebook」が、いよいよ日本でもお目見えされました。もしかしたら同志社中学校でも、将来的にChromebookの採用も考えているかもしれません。こういった変化の激しいIT(ICT)関連の動きも十分に考慮しつつ、教育活動を積極的に推進する同中学の姿勢に、ちょっと感銘を受けました。

                 
※参考資料:
アカデミックコモンズ、ネット塾ジャーナル、2014年09月29日
「ラーニング・コモンズのある大学」、朝日新聞出版
研究会開催案内・申込、情報活動研究会(INFOMATES)、2014年08月04日

デル株式会社

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