ワーキングメモリ

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著、KADOKAWA、2013年12月初版)を読んだのですが、笑いあり涙ありの感動巨編(?)です。まぁ、どこまで感動するかどうかは読む人それぞれですが、少なくても本の前半で抱腹絶倒することは間違いないでしょう。とにかく面白い。

ホールド法

“面白本” として類を見ないのは良いとして、一つ気になっている点もあります。それはホールド法という暗記法です。下記がその記述です。

・・・「ホールド法」は、一度覚えようと集中した後で、15秒~30秒、ぼーっとして、何も考えないようにしてから、思い出そうとする方法です。これは脳の作業記憶(ワーキングメモリ)が15秒~30秒しかもたないことを逆手に取った方法です。これにより、脳が、その情報を長期記憶へと移行しやすくなります。
※『学年ビリのギャルが・・・』、146ページ

ここで気になったのは、ワーキングメモリとその限界を逆手の取るという暗記方法(=ホールド法)です。これはカンタンで、一旦覚えて、15秒ぼーっとして(ホールドして)、また思い出す。これだけです。実際やってみると、シンプルなやり方の割りに、なかなか手ごたえもあります。

ステップ法とIMR

実はもう一つ「ステップ法」という暗記法も坪田信貴先生は紹介されています。1を覚えたら2を覚えて、1と2を覚えたら3を覚えて、1~3を覚えたら4を覚えて、1~4を覚える。詳細は別にして、ざっとこんな感じです。実はこれ、ノイチューター(neu.Tutor)の記事で紹介した羽根拓也先生も似たような記憶法を提唱されています。IMRという方法で、“Input Mix Recall” の略称です。


なるほど、たしかに「IMR法」はすばらしい。これが身に付けば、常にワーキングメモリを効果的に働かせることで、大量の情報を長期記憶に落とし込むことも可能でしょう。

最初はホールド法がお勧め

しかし、どうでしょう。「ステップ法」あるいは「IMR法」の方が効率的でしょうが、私はまず「ホールド法」をお勧めします。こちらの手法は実にカンタンです。効率性はやや落ちますが、やり方はシンプルです。まず「ホールド法」をやってみて、もし余力が出てきたら「ステップ法」や「IMR法」に移行すれば良い。そう思います。

あこがれのあの人が教えてくれる。答えてくれる。
ネットスクール[ N-Academy ]


『学年ビリのギャルが・・・』を書かれた坪田先生は多彩な心理学テクニックと教育メソッドの持ち主で、本の中でも様々なノウハウを公開されています。そのなかでも、ワーキングメモリとホールド法は非常に興味を引きました。勉強法って、まだまだたくさんあるのですね。

※参考資料:
記憶のモデルと構造、2003-2004 Kasabake & ryuchan
アトキンソンとシフリンの二重貯蔵モデル、短期記憶のメカニズムを説明する基礎理論、2004- Es Discovery
語彙習得理論を“現場目線”で活かす!:「ホールド」の効果、英語教育ニュース、2010年04月21日
ワーキングメモリ、Wikipedia、最終更新2013年04月12日