完璧な勉強法はない

※画像：　忘却曲線、Wikipedia、最終更新2014年09月26日、引用

「ウルトラセブン？」でも書かせていただいた“美人”弁護士・山口真由さんですが、彼女の提唱する（実行してきた）「7回読み」勉強法は実に素晴らしい。シンプルにして明快、エビングハウス忘却曲線よろしく繰り返すことで、（主に）目から入った文字・数字情報を海馬に入れ込み、長期記憶化する。もう、誰もが完璧な勉強法だと思うわけです。

最強「7回読み」勉強法にも弱点あり？

ところが、彼女いわく、この「7回読み」の習慣が（厳密には「斜め読み」の習慣が）邪魔をして、御自身の弁護士業務が総じて「速くて雑」になっているそうです。まぁ個人的には、彼女は仕事が「速い」のだから、問題ないのでは、とも思うのですが･･･

･･･誤字脱字をなくすことでした。私の仕事は、平たく言うと「速くて雑」。ざくざくと文章を書き進める反面、注意深さがないため、変換間違いなどが多かったのです。･･･「7回読み」をマスターする中で習慣化してしまった斜め読みの癖が災いして、見直しても、見直しても、誤字脱字に気づけないというのが、私の場合の、ケアレスミスの原因でした。

※東大首席弁護士が教える「ブレない」思考法、山口真由著、PHP研究所、2015年、69-70頁、引用

「早くて雑」とはいっても、私のように「遅くて雑」より、はるかにはるかにマシです（泣）。でもいずれにせよ、「7回読み」はあらゆる場面で“完璧”ではなかった。「斜め読み」のクセが、弁護士業務（企業法務系）にちょっとしたデメリットをもたらした。これは事実です。

「悪魔は細部に宿る」（The Devil is in the detail）と言います。「7回読み」を通じて東大合格・司法試験・国家公務員I種・東大首席を次々ゲットしてきたスーパーマン（スーパーガール？）の彼女をしても、その過程で「斜め読み」という悪魔が彼女に宿ってしまった、とも解されます。もちろん、私がこんな辛口コメントを書く資格は全くないのですが･･･

あまり勉強すると勘が鈍る？

また、少し話は変わるのですが、「7回読み」でどんどん長期記憶を増大化すると、その膨大な知識が邪魔をし、判断を狂わせるケースもあります。有名なのは小泉純一郎元首相。「オレは勘が鋭い。あまり勉強すると勘が働かなくなる」と（間接的に）大前研一さんに言ったそうで、その他に竹中平蔵さんにも“人の話は原則、1回しか聞かない。何度も聞くと勘が鈍る”といった主旨の話をしたと思います。

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①勉強し過ぎると、②知識が邪魔をして、③瞬時の判断が鈍る。これはつまり、人生も社会事象も自然現象も一度っきりで、厳密には「過去の繰り返し」ということはありえないからです。デジャブ（既視感）とリアル（現実）は別物なのです。リアルは常に更新されている。

だから、いくら事前に勉強を重ねても、それはあくまで過去の情報の積み重ねに他ならず、未来を正確に投影するものではない。例えば、過去の株価チャートと経済データを完璧に把握していても、明日の株価を正確に言い当てることは不可能です。過去と未来は別個のモノだからです。

勉強において完璧はない

現実にタイムマシンがない以上、どんなに勉強しても未来に対応することには限界があります。これは、勉強そのものに限界があるとも言えますし、角度を変えれば、完璧な勉強法はないとも言えます。したがって、勉強をする上では、まずは①柔軟性を持って取りかかり、かつ②（これが大事なのですが）一定の「俯瞰力」を常に忘れず、大げさに言えば大所高所から思考する感覚が重要でしょう。

つまり、勉強において完璧はないのです。あるのは、俯瞰力を持って世界全体を多少意識しながら、柔軟性を失わずに勉強を進めることかもしれません。

　東大首席弁護士が教える「ブレない」思考法