あえてノートをとらない

 東大家庭教師の結果が出るノート術、吉永賢一(著)、あさ出版、2015年

法学部に合格した修猷館高(福岡市)の内田佳那子さん(18)。数学が苦手で、赤、青、オレンジなど4~5色の付せんを使い分け、自身の理解度や弱点をつかんだという。

例えば、問題集で分からない問いにぶつかると、「危険マーク」の赤い付せんを貼った。緑は「もう一度、やり直し」で、青は「先生に即質問行き」。赤い付せんが貼られた問題ばかりを集めたファイル式の赤いノートも作り、役立てた。カラフルで、赤が減っていくのは励みになっただろう。・・・

「授業中にあえてノートを取らなかった」。医学部に合格した伝習館高(同県柳川市)の池末淳也さん(18)の勉強法は驚きだった。「ノートを取る時間があれば、教科書に書き込めばいいし、頭の中にインプットすることの方が大事」と考えたという。・・・

「あえてノートをとらない」「付せん活用」…勉強法、九州大学合格者に聞きました (西日本新聞)、Yahoo!ニュース、2016年03月15日

「ノートを取る」とか、「蛍光ペンを使う」とか、トラディショナルな受験勉強ノウハウはありますが、これにはデメリットもある。学習者がノートを取るなどの「作業」に満足して、理解し覚えた気になり、勉強した “錯覚” をおぼえる現象だ。これは受験生にとって非常に危険だ。実際には学習内容が頭に入っていない可能性がある。

不安感が海馬を刺激

むしろ「付せん活用」のような “中途半端” な学習法のほうが、反復学習もしやすく、不安定感があって、脳内の海馬を刺激しやすい。もちろん、受験生個々人の性格や思考、心理的な傾向等もあるので、一概には言えません。ただ長期記憶を司る「海馬」は(1)元来、生き死にかかわる重要な情報をキープする器官で、(2)反復学習により「生きるために不可欠だ」と勘違いし、情報を長期記憶として取り込みやすい。

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「付せん活用」という方法は付せんをつける・はがすというカンタンな作業で、勉強が進む。このカンタンさが反復継続を容易にし、しかもあの “中途半端” な付せんのヒラヒラが常になんともいえない危機感というか不安感を演出し(?)、おそらくは脳の海馬を刺激しやすい。

「ノートをとらない」のも同じで、こちらはさらに不安定な感覚を呼び起こす。とにかくノートという “記録” が残らないのだから、その場で頭に入れないかぎり、学習自体が成立しない。もう反復継続学習がし難いという状況が、「生きるために不可欠」な情報として海馬(と扁桃体)に刺激が与えられる。そうなる可能性が高い。

中途半端で不安感のある勉強法が、功を奏すこともあるのですね。人体や脳科学にはまだまだ面白いことがたくさんあるのです。学ぶ環境に恵まれていない方々も、その状況を逆手に取って「海馬」を刺激すれば、効果的な勉強ができるかもしれませんね。

※参考資料:
海馬を刺激する! 脳科学から見る、正しい反復学習と記憶の最適化、StudyHacker、更新日2016年03月13日
Neurogenesis 脳と心のお話(第四話)「恐怖する脳、感動する脳」、国立精神・神経センター神経研究所微細構造研究部 湯浅茂樹、ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明 CREST 「脳と学習」領域 大隅プロジェクト

   

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