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「文学なんでくだらない?」なんて、のっけから酷いタイトルのブログ記事で、すみません。今宵はクリスマスイブ。2015年のクリスマスイブなので、メリークリスマス!と記事に書こうと思ったら、なぜか太宰治氏の短編作品「メリイクリスマス」を読みだしてしまった。
読んでいるうちに、文学なんてくだらないと思ってしまう自分がいた。現代文の予備校講師・林修先生の言う通りだ。作家の手法として、「自問自答」がある。自分で問いかけて、自分で答える。それで読者の理解を得る。できうるならば共感を得る。
・・・そのひとは、私の思い出の女のひとの中で、いまだしぬけに逢っても、私が恐怖困惑せずにすむ極めて稀まれな、いやいや、唯一、と言ってもいいくらいのひとであった。それは、なぜであろうか。いま仮りに四つの答案を提出してみる。・・・答案は次の四つに尽きる。第一には・・・
※太宰治 メリイクリスマス、青空文庫
なんだこれ? 林先生の指摘通りだ。さすが「今でしょ!」で一世を風靡したカリスマ講師「林修」。東大法学部卒にて大学受験 “現代文” でトップクラスの予備校講師だけある。そして太宰氏(失礼・・・小説内では笠井氏)は知り合いの二十歳(?)の女の子に偶然会い、過去を回想し、自問自答し、しまいには「・・・私は、母を裏切って、この子の仲間になろう。・・・こいを、しちゃったんだから。」とトンデモナイことを書く。
まぁくだらないったらありゃしない。
でも面白い。読むのがやめられない。やはり “稀代の無頼派小説家・太宰治” のセンスを感じる。モテる文学青年の “くだらない” 色気を感じる。「くだらない」とは本来「筋が通らない」「意味が無い」という意味なので、まさに「くだらない色男=太宰治」とは天性のイイ男である。
しかし、文章は一転する。
「かまわない。さっそくこれから訪問しよう。そうしてお母さんを引っぱり出して、どこかその辺の料理屋で大いに飲もう。」・・・「でも、もうすぐ、そこですわ。」バラックの、ひどいアパートであった。・・・陣場という貴族の苗字が記しるされてある。「陣場さん!」と私は大声で、部屋の中に呼びかけた。・・・
娘は棒立ちになり、顔に血の気を失い、下唇を醜くゆがめたと思うと、いきなり泣き出した。母は広島の空襲で死んだというのである。死ぬる間際まぎわのうわごとの中に、笠井さんの名も出たという。・・・母が死んだという事を、言いそびれて、どうしたらいいか、わからなくて、とにかくここまで案内して来たのだという。
※太宰治 メリイクリスマス、青空文庫
・・・くだらなくなかった。作品に “筋” が通っていた。私は間違っていた。太宰作品にはだめんず・うぉ~か~的なノリと同時に、ある種の深淵なるドラマがあると聞いたことがある。これもそのひとつなのだろう。
文学なんでくだらない? いいえ、くだらなくないのです。
※参考資料:
・太宰治、Wikipedia、最終更新2015年11月27日
・メリイクリスマス (小説)、Wikipedia、最終更新2015年10月18日
・下らない(くだらない)、語源由来辞典
・太宰治のおすすめ作品を選んでみた、まつたけのブログ、2014年06月19日
・【2013新語・流行語】年間大賞は史上最多4つ 「じぇじぇじぇ」「倍返し」など本命勢揃い、ORICON STYLE、2013年12月02日
・だめんず・うぉ〜か〜、Wikipedia、最終更新2015年09月21日
・押切もえ“だめんず”太宰治にダメ出し、映画.com ニュース、2010年02月16日