教師主導から児童主導へ

普通の公立小学校が“iPad活用先進校”になれた訳――古河市立古河第五小学校

・・・同校の元校長である平井 聡一郎氏に活用の実態を聞いた。・・・IT化を推進する直接の要因となったのは、2014年4月の「Windows XP」サポート切れに伴い、コンピュータ室の機器を早急に入れ替える必要に迫られたことだ。それを機に「何のためにIT機器を利活用するのか」を問い直し、教育のIT化を推進することで、「教師主導」から「児童主導」の授業へと転換し、児童の主体性を伸ばそうと考えた。・・・

平井氏が古河第五小学校で進めたIT導入の取り組みは、大きく3段階に分けられる。
第1段階:ディスプレー、書画カメラ、デジタル教科書導入
第2段階:1学級分40台のiPad導入
第3段階:1人1台のiPad導入・・・

・・・平井氏の実践で特筆すべき点は、当時、校内で授業力を最も評価されていた50代のベテラン女性教員を取り組みの中心に据えたことだった。IT機器といえば、若手男性教員の得意分野というイメージが根強いが、同氏はあえてITが不得手なベテラン女性教員に白羽の矢を立てた。・・・
TechTargetジャパン、2014年08月21日、引用

主体性を伸ばす

古河市立古河第五小学校(古河五小)のiPad活用は、特筆すべきものであります。まずは、①ゴールが明確であること。そして、②無理のない段階的な導入プランであること。優れた経営コンサルタントのように、校長の平井氏は学校のIT化に成功を収めたと言えるでしょう。

①のゴールですが、このブログのサブタイトルではありませんが、それこそ“生徒の未来へ”という思いが貫かれています。つまり、IT化により「教師主導」から「児童主導」へ授業スタイルを転換させる。そしてその結果、「児童の主体性」を大きく伸ばそうという試みです。

おそらく平井氏は、子どもたちの人生において、彼らの「主体性」が個人の生活全般はもとより、社会全般にも大きく影響を及ぼすことを、真摯に感じていたのでしょう。

無理なく導入し、シナジーを生む

平井氏は、教員のITスキルを冷静の観察し、一時に導入するのは無理があると判断、3ステップに分けて推進しました。①ディスプレーやカメラ等の導入→②1学級分40台のiPad導入→③1人1台のiPad導入。的確なマイルストーン分析と根気のいる進捗管理で、保守的で職人気質な教員相手にIT化を推し進めるのは大変だったと思いますが、授業等で「ITのメリットを感じさせる」ことで乗り切ってきました。

そして注目すべきは、「ITが不得手なベテラン女性教員」をあえてIT推進の中心に据えることで、より効果的なITの活用を進めたことです。つまり、「授業力があるベテラン教員は、IT機器に限らず教具の使い方が全般的にうまい」(平井氏)ことに着目し、ベテラン教員のノウハウを下敷きに、IT機器を授業に導入したのです。

ベテラン女性教員をIT推進の中心に据えることは、もちろん、人事的な作用を引き出すでしょう。ベテラン教員が主導することで、教員全体がIT活用に積極的にならざるを得ない。こういった効果はあるでしょう。しかし、なんと言ってもベテラン教員の長年磨き上げられてきたノウハウと、iPadなどのIT機器との融合が、これまでにない素晴らしい教育ノウハウを生み出した。まさに“シナジー効果”です。


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古河五小のケースでは、IT活用に詳しい平井氏が、校長という立場を利用し、トップダウンで運用してきたケースです。なかなか全国の学校で真似できるケースではありません。しかし、原点はあくまで「児童主導の授業」という考え方であり、本質的なゴールは「児童の主体性を伸ばそう」という点です。この辺りの発想自体は、非常に意義深いものがあると思います。

※参考資料: マイルストーン分析とPCPC、PMstyleコラム、2008年07月04日


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