※写真: SMILE ZEMI-中学生向け通信教育、パンフレットより
昔、トヨタ自動車が提唱していた「ムリ・ムダ・ムラ」を無くす「トヨタ生産方式」。俗に「かんばん」方式と呼ばれるノウハウもそこには含まれています。それを地で行くようなネット塾系教材が出てきました。スマイルゼミの「オーダーメイド学習」(中学生向け通信教育、ジャストシステム)です。
◆スマイルゼミ◆中学生向け通信教育
トヨタ生産方式と酷似?
トヨタ生産方式では、①対象を小さく分割する、②優先順位を決める、という考え方がありました。人間の能力、それも“凡人”の能力を想定して、頑張れば充分に対応できるという考え方です。この発想を流用したのかは定かではありませんが、このスマイルゼミでも、①単元ごとに小さく分割して、②「優先マーク」で優先順位を明示してくれます。
学習者はスマイルゼミのタブレットで勉強していくことで、学習履歴が電子的に蓄積され(過去データ)、今後の学習プラン、学習プログラムが個別に抽出されます(未来データ)。こういった個別指導に徹底されたカリキュラムをタブレット上に展開できるのは、ソフトウェア業界の老舗にして東証一部上場企業であるジャストシステムならではでしょう。
紙の教材がたまらない
また、基本的にタブレット上だけで学習が完結するので、通常の通信教育のように紙の教材がたまりません。この点も個人的にはとても魅力的です。これは単に乱雑な教材の山(?)から解放され、部屋が綺麗になる(!)というメリットだけではありません。
私の場合、学生時代そして今でも、ノートに書いたり参考書類にアンダーラインを引いただけで、「勉強した気分」になってしまう性質です。さらに言えば、参考書や問題集を買っただけで、勉強した錯覚に陥ります。もちろん、本質的な勉強はしていないので、知識等は身についていない・・・。
タブレットでの学習では、紙の教材が机の上に増えるといった(自分の心への)“物理的なゴマカシ”はない。したがって、私のような見かけだけの勉強ごっこ(?)を防ぐこともできます。
優れた学習効果
つまり、この紙に依存しない電子学習スタイルは、主観的な(独りよがりな?)自己満足に浸りにくいので、それだけでも学習効果が期待できます。もちろんそれだけでなく、スマイルゼミでは個別の学力に合わせた最適な学習プログラムが提供されます。より優れた学習効果が得られるでしょう。
ここで、「個別の学力に合わせた最適な学習プログラム」と一言で済ましていますが、これは実は大変なことで、データベースの活用等かなり高いレベルのIT開発スキルが求められます。ジャストシステムは、ムリ・ムダ・ムラのない生産プログラムであるトヨタ方式を、教育シーンに移植しようとしているのです。
ビッグデータの活用
このムリ・ムダ・ムラのない学習プログラムというのは、実際にはかなり難しい。(話は少し迂回しますが)例えば、予備校講師の林修氏は、生徒の学力を的確に把握する能力が非常に高い。これは、彼が“学校の勉強”というテリトリーで、相当に優秀であり、相撲で言えば横綱に当たるからです。
つまり、優れた横綱から見れば、下位の力士の力量は短時間に把握できる。その力士の不足している技量のポイントは、目に浮かぶようにわかるでしょう。林先生の場合もそれと同じで、勉強において教え子の足りない点がすぐにわかるそうです。なぜなら、カリキュラムに関する膨大なデータが、既に彼の脳内データベースにあるからです。
したがって、ムリ・ムダ・ムラのない学習プログラムを構築するには、学校教育に関する膨大なデータベースを備える必要があります。いわゆる「ビッグデータ」と言ってもいい。相当なITにおける力量がないと、ビッグデータの活用はできませんが、ジャストシステムなら可能でしょう。
もしかしたら、教育産業=IT産業・・・なのかもしれません。
※参考資料
・ムリ・ムダ・ムラの意味、MBA経営辞書、goo辞書
・トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして、大野耐一著、ダイヤモンド社、1978年
・ムリ、ムダ、ムラをなくす大事な3つの考え方 – Change The Worlds、2012年07月13日
・タブレット授業のデメリット、ネット塾ジャーナル、2014年03月17日
・タブレットで“真の個別指導”、「スマイルゼミ 中学生コース」、ケータイWatch、2013年11月21日
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