知能教育より「気質」教育

子供の習い事にお金をかけるより大事なこと

・・・最近の教育理論では、人が生きていき、何かに成功するには、知能や運動神経よりも気質のほうがずっと大切であることが知られています。ある研究によると、やり抜く力、自制心、意欲、周りの人々とうまくやっていく力、感謝の気持ち、楽観能力、好奇心などの気質(行動特性)を持ち合わせているかどうかが、その後の人生の満足度や達成度と深く関わりを持っているそうです。・・・

2009年の、米コーネル大学のゲイリー・エヴァンズ氏とミシェル・シャンベルグ氏による研究”Childhood poverty, chronic stress, and adult working memory”です。彼らの研究は、子どもの学力(これをワーキングメモリの程度で測定しています)に影響を与えているのは、貧困そのものではなく、(おそらく貧困ゆえに家庭や地域に存在する)ストレスであることを示唆したのでした。

幼い頃のストレスが生物の気性に与える影響については、様々な研究があります。例えば、ネズミの実験によると(人間にも当てはまるかについては定かではありませんが)、生物学上の親の習慣とは関係なしに、生まれてすぐのころになめられたり毛づくろいをされたりした経験をもつネズミは、そういう経験のないネズミよりも勇敢で大胆に育ち、環境にもうまく適応できることが知られています。・・・

教育パパ・ママが子供をダメにする、日経ビジネスオンライン、慎 泰俊、2014年04月17日、引用

モルガン・スタンレー・キャピタル出身で投資プロフェッショナルの慎 泰俊(しん・てじゅん)さんは、途上国でマイクロファイナンスなどを取り組む新進気鋭の社会派ビジネスパーソンです。早稲田大学大学院ファイナンス研究科を修了されている優秀な方ですが、その彼が「知能や運動神経よりも気質」が大事だと、看破しています。

気質=自制心、意欲、楽観能力、好奇心・・・

「気質」がなにより大事で、すなわち、気質=「やり抜く力、自制心、意欲、周りの人々とうまくやっていく力、感謝の気持ち、楽観能力、好奇心など」です。その気質をはぐくむには、ストレスが大敵で、代表的な例が「家庭内の不和」です。たとえば、家庭内がうまくいっていないと、子どもの気質は悪化します。確かによく聞く話ですね。

逆に、家庭内に愛情が満ちていれば(もちろん、一定の経済力も必要でしょうが)、子どもの気質は向上します。つまり、例えば夫婦仲良く子どもに寄り添う家庭であれば、子どもの「気質」は優れたものになり、それが結果的に子どもの「知能・運動神経」に反映される。もちろん、中長期的にはその子の将来の経済力・社会力にもつながる。

愛情を持ってセキュア・ベースを育む

昔から子どもは愛情を持って育てないといけないと言われていますが、まさにその通りです。脳科学者の茂木健一郎さんは成功者の条件に①「倫理」、②「利他性」、③「セキュア・ベース」、④「ロール・モデル」を挙げています。この4条件において、「気質」は①、②、③と深い関係があります。

その中でも、私は特に③「セキュア・ベース」に注目したい。なぜなら、②「倫理」や③「利他性」は大人になってからでも獲得しやすいですが、③「セキュア・ベース」は心の奥底に形成される潜在意識(心の核、根っ子)にあたるので、幼児期に作られるのが最も自然だからです。

国際コーチ連盟マスター認定コーチの市毛智雄氏も、幼児期のセキュア・ベースが人間の成長に重要な役割をはたしている、と認識しています。


・・・イギリスの医師ジョン・ボウルビィは、幼児は母親がそばにいると安心感を示し、母親を「心理的な安全基地」として利用しながら新たな探索行動を行っている、という観察から、「セキュア・ベース(安全基地)」という学説を提唱しました。
 
つまり、人が不安や恐怖を越えてリスクを背負って、新しい可能性に挑戦するには、何かしらの「セキュア・ベース」が重要になるというのです。・・・
セキュア・ベースとしてのリーダー、Coach’s View、2011年01月26日、引用

子どもの教育・養育において、「知能」より「気質」が大事なのですが、それはまず第一に温かい家庭が作り出す「セキュア・ベース(安全基地)」がスタート地点である気がします。

家庭>セキュア・ベース>気質>知能

夫婦仲良く温かい家庭が、子どもの心に「安全地帯」を形成し、その子の「気質」にも良い影響を与える。そして、それが「知能」や「運動神経」に徐々に反映され、ひいては彼ら/彼女らの社会的な成功にも結びつく。そう考えると、幼児期の教育において最も大切なことは、いかに“愛情あふれる温かい家庭”をつくるか、という点になります。

これは簡単なようでいて、実は非常に困難をともなう。単に「知能」を向上させるなら、子どもにお金をかけて、(外部の)良い先生に預けて、英才教育をさせればいい。あるいは今なら、優れたネット塾などのオンライン教育を受けさせるのも良いでしょう。しかし、「気質」を育むとなると、“愛情あふれる温かい家庭”が必須になり、これは(外部の)良い先生等に預けるわけにはいかない。まさに、親の“人間力”が問われるわけです。

教育は奥が深いですね。


※参考資料:
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー別冊 「超」MBAの思考法、茂木健一郎・他、ダイヤモンド社、2009年
セキュア・ベース、ネット塾ジャーナル、2013年12月11日
市毛智雄のプロフィール/コラム一覧、Coach’s View

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