教育は自立のための必須条件
増田 ユリヤ筆者:Sさんは、これまでの人生で「ああ、やっぱり勉強って大事なんだ」と思ったことはある?
編集者S:そうですねぇ……。高校生までは、ごく普通の子だったと思います。周囲の子たちも通っているから学習塾に行き、大学受験があるから予備校に通い……って、これじゃあ、学校で何を勉強してきたのかって感じですね(苦笑)。・・・筆者:・・・学ぶ喜びみたいなものを感じたことはない、ということ?
編集者S:今、振り返ってみると、残念ながら「これだ!」というような感動を覚えたことはない気がします。それよりも……。筆者:それよりも?
編集者S:社会人になってからの方が、日々学んでいるという実感が大きいですね。ただ、仕事をしているその時々で、これまで身につけてきた知識を総動員させて考えていることに気づいたり、それじゃ全然足りないので、もっともっと学びたい!という気持ちが常にあります。今頃になって、ようやく学ぶ必要性とか、喜びを実感できるようになったのかな……。・・・※仕事・子育てをしながら、学び続けて博士号をとる:日経ビジネスオンライン、2014年04月17日、引用
この増田ユリヤさん(ジャーナリスト、高校の日本史・世界史・現代社会講師)の記事では、この後、エレーヌ・ウアナスさん(フランス教育省学校教育部門補佐役)へのインタビュー記事が書かれています。いわゆる女性の自立と教育の重要性を説いた内容なのですが、私はそれより、上記の増田さんと編集者Sとやり取りが面白いと思いました。
学校の勉強は“エッセンス”
要はこうです。①学校でそれなりにキッチリ勉強して、大学まで行ったが、「これだ!」という実感がない。②社会人になって学んでいる実感が大きい。ようやく学ぶ必要性とか、喜びを実感できるようになった。なるほど。これはもう、私を始め多くの方々と同じ意見(感想?)ではないでしょうか。
つまり、学校の勉強って、世の中の森羅万象のエッセンス(ちょっと大げさ?)を抽出して、教育カリキュラムとして教えている。“エッセンス”だから、実際の社会でダイレクトに役に立つかどうかはわからない。言い換えると、学校の勉強は“間接的”には社会や人生で役立つが、“直接的”ではない。
学校は生徒に、社会で役立つであろう基本的な情報その他の“エッセンス”(エキス、香料?)を振りかけている。そういうイメージです。振りかけられている生徒は、「ホントに将来役立つの?」と実感が持てない。そして、卒業して社会に出る。そこで初めて、勉強の大切さが実感できる。
ただし、ややこしいのは勉強の大切さが実感できるケースにバラツキがある。極端な話、多くの方々は「漢字」を書けると日常生活にメリットがあるし、恥もかかない。でも、ごく一部の人々にとっては、単に漢字は読めればよく、書く必要は無い。スマホ(スマートフォン)があれば、(一応)読めれば事足りるのです。
学校教育はライフラインで、実感しにくい
私は思うに、「学校教育=ライフライン」だと思う。人々が日常生活をする上で、電気・ガス・上下水道はあまり意識されない。そして、それらの知識も普段は必要ない。あるいはこうも言える。「学校教育=建物の土台・基礎」でもある。建築物の基礎部分は非常に重要だが、普段は意識しない。手抜き工事が発覚して、はじめて「基礎が重要なんだ」と慌てる感じです。
だから、学校の勉強ってハッキリ役に立つかどうか実感しにくい。だが、間接的には役に立つ。やはり、社会生活における武器になりうるのです。
学校教育は間接的な社会で役立つエッセンスなので、①「学校教育→就職」がキャリア的にムダがなく望ましいが、逆の②「就職→学校教育」でもOKでしょう。世界的な経営コンサルタントの大前研一さんもそうおっしゃっています。と言うか、②の方が望ましいとまで主張されています。
※大前研一氏、今高校生なら大学行かず就職、ネット塾ジャーナル、2013年01月16日
女優・作詞家の寺田有希さんも、「早い段階から働いたほうがいい気もする。」と、やはり②をお勧めしています。大前さんと同じような意見ですね。彼女はYouTubeのホリエモンチャンネルに出ているのですが、私はそう思いました。
※早い段階から働いたほうがいい、ネット塾ジャーナル、2014年01月24日
※写真:寺田有希オフィシャルサイトより
“教育”はエッセンスなので、社会の変化に対応できる
似たような考え方として、「学校教育」というのは、社会生活のおける過去の成功体験から抽出されているプログラムなので、変化の激しい昨今(そして近未来)のグローバル社会ではあまり役に立たない、とも言われます。
それはそうですが、学校教育のカリキュラムもその点には考慮されていて、だからあえて教育プログラムというのは、エッセンス的な内容になっています。今後、世の中が大きく変化しても、その変化に(ある程度)対応できるように・・・。
つまり“教育=ライフライン”なので、「社会で役に立つ」という過度の期待は持てないが、しかし陰になり日向になり間接的には必ず役に立つ。私はそう確信しています。そして、ネット塾などのオンライン教育が身近になった今、学校教育の重要性が(従来とは違った意味でも)見直されてくると思っています。
教育は人生のライフラインなのです。