依然高い大卒の価値 学歴に賃金比例 熱心な学習、能力育てる
大学入試センターの浜中淳子准教授は、大学で熱心に学ぶことが卒業後の学習につながっており全入時代でも大学教育の効用は依然として高いと指摘、大学過剰論を批判する。・・・
正規雇用で働く女子については、大学卒10.5%、専門学校卒7.7%と、大学卒の収益率のほうが大きい。・・・正規雇用の男子の場合は、大学卒の収益率が6.8%であるのに対し、専門学校卒はわずか2.6%。・・・厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に見ることもできる。12年度のデータを用いて描いた学歴別賃金カーブをみると、「大卒」と「高専・短大・専門学校卒」との間に大きな差が開いている。しかも、時系列の変化を追うと、この差は近年になって拡大したことが判明する。・・・
私たちが04~09年にかけて行った大学卒業者を対象にした調査では、大学進学後の熱心な学習への取り組みが就業後の学習につながることで所得が向上していること、さらにこの図式は大学のタイプを問うことなく、経済学部のような文系の世界でもあてはまることが明らかになった。・・・大学時代に本を読んでおけば、就業後の読書も豊かになり、汎用的な能力の育成につながり、結果として所得は増える。・・・
※浜中淳子・大学入試センター准教授、日本経済新聞、2013年09月16日、引用
大学生が就職活動(就活)でなかなか職にありつけない・・・という “苦労話” が、もうカレコレ20年くらい聞かされています。“大学を出ても就職できない” という話を刷り込まれた筆者にとって、この浜中准教授の記事は目からうろこです。
大卒の賃金は多い
確かに厚生労働省の調査でも、明らかに「大卒」(大学・大学院卒)は平均して多くの賃金を得ている。これはなぜか。
※学歴別賃金カーブ、2012年度・男子、厚生労働省、リンク
もちろん、旧来のように雇用する会社側でも「大卒」の “肩書き” を信用し、より多くの出世・昇進する機会を与え、結果として賃金を多く与える。このような傾向は残っているでしょう。しかし、バブル経済がはじけて早20年以上が過ぎ、「大卒」の肩書きだけではとても食っていけない時代です。他には何か要因があるのではないか。
就業後の学習
その答えは「就業後の学習」でしょう。社会人になった後でも勉強をするのです。「大学進学後の熱心な学習への取り組みが、就業後の学習につながることで、所得が向上している」と浜中氏は論じています。まさにその通りでしょう。つまり大卒者は実は “勉強好き” なのです。「まさか」とも感じるが、大卒者の多くが、無意識に(!)勉強好きなのです。
なぜか? 例えば高校卒業者、あるいは専門学校卒業者でも同じではないのか?
高校は “やらされる” 勉強で、大学は自ら取り組む勉強
いいえ、違うのです。あくまで平均的な話ですが、高校あるいは専門学校での勉強は「やらされる」勉強です。誤解を恐れず言えば、強制される「訓練」です。しかし、大学は違う。自ら取り組む勉強です。大学自体は研究機関でもあるので、学生は主体的に学習し、調査し、研究するわけです。ここが決定的に違う。
もちろん大学の教育でも、勉強を強制されるシーンはあります。しかし、それは例外だ。世間で二流と目される大学出身の筆者ですが、また三流(?)大学卒の友人もいますが、大学教育にはどこか「自由」そして「自主性」が色濃くあります。大学のレベルを問わず、学生はある程度、自ら主体的に学びます。
従って、大卒の人間は、無意識のうちに「自ら主体的に学ぶ」クセがついています。もちろん、人によって濃淡はあります。しかし、大学4年間で多少なりとも「やらされない勉強」を経験しています。これが大きい。これが「就業後の学習」につながっていると思う。社会に出てからも、状況に応じ、自ら勉強を始めてしまうのです。
やはり「大卒」には(見えない部分も含め)充分な価値があるのです。