丸暗記不要の英文法、関正生(著)、研究社、2015年
大学や資格の受験生は孤独になりやすい
メンターは「恩師」とも訳されるときがありますが、仕事上、さらには人生をおくる上での「指導者・助言者」という意味です。企業における「メンター制度」は1980年代に米国で始まったと言われていますが、その当時に世界を席巻していた日本企業で行われていた「OJT」を米国企業が少し参考にしたようです。
恩師という意味合いもあるように、メンター制度的な考えを、教育とりわけ孤独になりがちな「受験勉強」に取り入れることは理にかなっていると思う。とくに大学受験や資格試験となると、対象者が子どもではないほぼ「大人」なので、まさに “孤独” になりやすい。受験内容が高度なので、保護者・親などが手取り足取り指導するわけにはいかないからです。
自分に合うメンターを選ぶ
そこで大学受験などにトライする受験生には、ぜひ自分自身の学習過程の中で、「メンター」を選びとってほしい。私は「受験サプリ」(2016年4月20日よりスタディサプリへ統合予定)でお馴染みの関正生先生(英語)と「永野数学塾」塾長の永野裕之先生(数学)を優れたメンターとして挙げたい。
お二人とも受験だけに留まらず学習指導への意欲・知識・経験そしてノウハウには定評があり、話を聞いているだけでも実に心地いい。それに決して押し付けがましくない。サラッとしています。これが今風なのかもしれません。
ただお二人ともその指導スタイルは相当 “個性的” であり、したがって生徒各人において「合う・合わない」は当然ながら有ると思われます。合わないヒトにはやはり合わないでしょう。これは仕方がない。彼らの指導スタイルの「個性」がウリでもあるわけですから・・・。
「エッセンス型」か「包括型」か
たとえばお二人とも基本的には暗記事項はできるだけ少なくして、英語なら英語、数学なら数学の「本質・キモ」を理解し身につけていくことで、その教科の全体をカバーしていこうという発想です。学習効率が増し、勉強時間や労力が比較的少なくなるだけでなく、本質をおさえているので、未知の問題にも弾力的に対応しやすい。大げさに言えば、人生の新たなシーンでも応用が利きやすいというメリットが有ります。
ただ、例えば「ウルトラセブン?」で書かせていただいた東大首席弁護士・山口真由さんとは、ある意味、真逆の勉強スタイルです。山口さんは「東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法」でも書かれていますが、ざっくりでもいいから全体を読んで、それを3回繰り返すと、大まかな情報の流れが脳内にできあがり(土台づくり)、残り4回読み込むとある程度の詳細部分までカバーできる(理解度アップ→最終確認)・・・としています。こういった「包括的・繰り返し的」勉強法ですので、やや暗記・記憶に重点を置くスタイルともいえます。
関先生や永野先生の場合、繰り返しに関してはもちろん肯定的ですが、「包括的=すべてをひっくるめる」勉強法ではなく「エッセンスだけをおさえ、理詰めとイメージで解く」カタチです。そこが決定的に違う。たとえば数学に関して永野先生の「永野数学塾」では “丸暗記を極力避け” ますが、逆に山口弁護士は「参考書を使い、それを合計7回繰り返し解いて、問題のパターンを覚え込む方法をとりました」(雑誌『プレジデントファミリー』の公式サイト)とやはり “覚え込む” スタイルです。
男は “演繹的”、女は “帰納的” がお好き?
例えて言うならば、エッセンスだけおさえる勉強法は「地図の見方と使い方だけをマスターして、車を運転する」感じです。7回読み勉強法は「とにかく地図を何度も見て、頭のなかに地図全体のイメージを覚えさせてから、運転する」感じでしょうか。前者の「エッセンス型」が演繹的、後者の「包括型」が帰納的なアプローチだとも思います。
このように天才・秀才と言われる方々でも、その勉強法のやり方はかなり違うわけです。英語にしても関先生の考え方は(極端に言えば)「英語という言語のそもそもの歴史や成り立ちから攻めていくスタイル」なのに対し、例えば同時通訳の小熊弥生さんは「昼も夜もなく英語漬け」という “包括的ど根性スタイル” です。どちらかというと男性はエッセンス重視の演繹的、女性は包括的な帰納的な勉強スタイルが合っているのかもしれません。父性・母性と関係しているのかなぁ・・・。
とにかく受験生のみなさまは、ぜひご自分の勉強スタイルに合いそうな「メンター」たちを見つけて、ご自分の中の「メンター制度」を確立していくことを一つの提案としてオススメいたします。
※参考資料:
・メンター(めんたー)とは、コトバンク
・「メンター制度」|3分でわかる最新人事コラム、経理・会計事務所・税理士・会計士の求人・転職ならMS-JAPAN 管理部門の専門エージェント、2012年12月17日
・関 正生 (英語講師) (@sekimasao)、Twitter
・永野数学塾 永野裕之 (@naganomath)、Twitter
・永野数学塾、東大卒講師の個別指導学習塾、神奈川県大和市中央林間
・ウルトラセブン?、ネット塾ジャーナル、2014年03月24日
・教科書を7回読むだけで、断然トップになれた!(後編)、雑誌『プレジデントファミリー』の公式サイト(プレジデント社)
・これならできる、続けられる、ネット塾ジャーナル、2015年10月03日