学校の勉強の効用

僕は、外国語を操ることによって、発想を豊かにする効果があると考えている。

サピア=ウォーフの仮説(言語的相対論)という有名な学説がある。ある部族が使う言語には、青と緑を区別する言葉がないという。・・・僕らはすぐに青と緑を識別できるが、彼らはまったくできないわけではないが、識別に時間がかかる。・・・概念は言語に縛られていると言ってもかまわない。

そうであるなら言語を切り替えることによって、概念を多面的にとらえることができるだろう。外国語を使うことで、自分の頭にある概念を疑い、別の角度から検討しやすくなる。それは新しいオリジナルなビジネスを生みだす上でも、必ず役に立つと思う。

たかが英語!、三木谷 浩史(著)、講談社、2012年、133頁

語学は認識力を高める

外国語を学ぶことは、多面的な認識力を高めることにつながる・・・と三木谷浩史さんの言いたかったのかもしれない。まさにそうでしょう。これは学校の勉強全般に言えることでもあります。例えば、漢文や古文は社会人になってからほとんど使わないと思うが、過去の(相当昔の)日本人(あるいは中国人)が見ていた世界が想像できるわけで、学習者の多彩な認識力につながる。

まぁ、漢文に関してはあの映画字幕の翻訳者・戸田奈津子さんが「漢文の勉強をもっとやっておけばよかった」と後悔されています。四字熟語(四文字熟語)の翻訳における威力はすごく、”海千山千” の彼女でもちょっと学生時代を反省しているようです。

やっておけばよかったと後悔している勉強は?

漢文です。漢文をすると漢字を覚える。四文字熟語もね。字幕というのは非常に短くまとめないといけない。ここで四文字熟語は有用なわけです。例えば「呉越同舟(注1)」。普通に説明したら長くなることを、たったの四字で意味を伝えることができる。そういうものが漢文にはたくさんある。今でも一応勉強してますけど、脳が柔らかいうちに勉強しておきたかった。

※注1:仲の悪い者同士が、たまたま同じ場所にいること。また敵同士でも共通の困難に対しては協力するたとえ。
NHK テストの花道 – 過去の放送 -「やっててよかった!あの勉強」、2014年02月24日放送

ちなみに漢文・古文は今の大学受験でも試験対策がしやすく、勉強すればそれだけ高得点を狙えます。そして、それだけでなく大人になってからも望外に使えるツールになるかもしれません。特にグローバル化が進む現代ですから、外国人とのコミュニケーションでも非常に有意な知識になると思います。「カープ女子」ならぬ「カンブン(漢文)女子」が出てくる日も近い?

古文の勉強法(センター古文7割突破)|大学受験に効く【受験サプリ】

数学が仕事でのピンチを救う

社会に出て仕事をしていると、どうしても目先の結果に左右される。すると、どうしても目先の情報、目先の勉強しか意味がないと感じてしまう。しかし、仕事や人生に行き詰まった時、その状況を打開するには、視野を少し広くして多様な角度でモノゴトを分析する必要がある。こういった時に、実は仕事でほとんど使わなかった数学の因数分解や方程式が役に立ったりする。

北野武、続編は暴力描写に変化「因数分解みたいに死体囲った」

学校の勉強はそれ自体で “稼ぐ” というより、ピンチになった時、冷静に対応する “ツール” としての役割が大きい気がする。東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕先生いわく、「数学を上手に使えば、新入社員が部長を論破することだって、交渉事や企画会議などで絶体絶命のピンチから大逆転を図ることだって可能。」だそうです。(著書『とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学』より)

 とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学、西成活裕(著)、日経BP社、2012年

“学業” で仕事の幅が広くなる

まぁ、人生のピンチを救うというか、もうちょっと見方を変えれば、学校の勉強は「仕事の路線を変えるとき、意外と役立つ」と言えます。つまり、あるAという仕事をしていると、Aに直結する勉強しかしない。井の中の蛙だ。しかし広くベーシックな知識・ノウハウである学校の勉強をしてきたとすれば、Bという仕事に切り替えるとき、多様な認識力が役に立つ。

例に出して大変恐縮だが、学業成績がからっきしで野球バカにみえる(失礼・・・)清原和博氏は今までも、そしてこれからも、プロ野球関連の世界でしか生きられないと思う。しかし、同級生の桑田真澄氏はかつてあれだけスキャンダルでマスコミの叩かれた過去がありながら、早稲田大学大学院(スポーツ科学研究科)を首席で修了し、東京大学大学院(総合文化研究科)に進まれ、野球界だけでなく各方面から注目を浴びている。

一般論の域を超えないかもしれないが、学校の勉強(≒学業)の延長には仕事の幅が広くなるという効用が、間違いなくあると思う。

※参考資料:
カープ女子、NAVER まとめ
ピタゴラスの定理、Wikipedia、最終更新2015年04月24日
北野武、続編は暴力描写に変化「因数分解みたいに死体囲った」、ORICON STYLE、2012年10月05日
桑田真澄、Wikipedia、最終更新2015年09月03日

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