少子高齢化を救うロボティクス

米国の非営利調査機関Pew Research Centerが2014年に実施した調査によると、回答した専門家1896人中の約半数が、将来はブルーカラーの製造業のみならずホワイトカラーも含めた膨大な数の職がロボティクスと人工知能に置き換えられると予想しているという。

また、米調査会社Forrester Researchは2015年8月、概して楽観的な雇用展望を示す記事を発表したが、それでもテクノロジーによって消失する雇用は2270万人(米国の雇用市場の16%)と予測し、テクノロジーによって創出されると予測される雇用1360万人を上回っている。・・・

職を奪われるどころではない――ロボット開発が行き着く必然の未来とは、TechTargetジャパン、2015年12月04日

日本は少子高齢化で労働力不足

日本は世界一進んだ少子高齢化社会です。人口減少も著しく、おおよそ2055年には1億人を割り込む。今でもそうですが、労働力不足は深刻です。いわゆる15歳から65歳までの「生産年齢人口」がどんどん減っていく。中長期的には労働力不足で、もう日本経済に未来はない、と言われています。


※図:第1節 人口減少の概況、中小企業庁、中小企業白書、2006年、引用

大前研一さんも言っていましたが、この人口統計というのはかなり正確に予測される。考えても見てください。あの恐ろしくも悲惨で過酷な東日本大震災の犠牲者数は、おおよそ2万人。縁起でもありませんが、仮に史上最大規模の超大型の災害や戦争が起きたとしても、日本の人口の1%である120万人が短期間に犠牲になることは、さすがに考えにくい。極端に言えば、そういった大災害などの影響は人口統計予測に組み入れなくても、問題ないのです。

移民よりも「ロボティクスと人工知能」

つまり、2055年頃に日本の人口が1億人を切ることは、ほぼ間違いない。もはや日本経済のおける労働力不足は喫緊の課題なのです。そこで海外から外国人労働者に来てもらおうという「移民」の話になります。しかし、これは治安問題も含め、イロイロと問題がある。

外国人に来てもらおうとカンタンに言いますが、「移民」となるとしごく大変なことです。①食料・エネルギー、②教育、③職業、④社会保険、⑤医療、⑥金融、⑦治安維持、⑧外交問題・・・といった例えばこれら8つの問題を適切に用意しなければならない。キチンとやろうと思ったら、国家として社会としてものすごい手間とお金がかかるわけです。移民受け入れという国家事業(?)は想像以上に大変なことなのです。

そこで「ロボティクスと人工知能」の出番です。日本が直面しつつある生産年齢人口減少=労働力不足をロボットとAIたちに対応してもらおうというわけです。

「テクノロジーによって消失する雇用は2270万人」(米国)というのであれば、日本でも1000万人くらいの雇用消失が起きそうです。同時に、日本の就業者数が2040年あたりになると約1500万人も減りそうです。あれ? 日本の「雇用喪失の数」と「就業者数の減り方」が(かなり暴論ですが)まぁまぁだいたい同じくらいになるという結論になります。

高齢者はテクノロジーが苦手

さて、今後の生産年齢人口や就業者数の減少を「ロボティクスと人工知能」で補うとすれば、我々日本人はロボットとAIを使いこなさなくてはならない。ここで深刻な問題が発生します。超高齢化社会の進展ですので、新しいテクノロジーには高齢者は対応しにくいという現実が表面化します。

そこで「ロボティクスと人工知能」を生み出し、使いこなす若い人材が、ロボットと高齢者とをつなぐ必要性が出てくる。未来の教育では、若い子どもたちに「ロボティクスと人工知能」を使いこなすだけではなく、それを高齢者にかみ砕いて説明するような能力が(残念ながら?)求められるでしょう。幸か不幸か、様々なビジネスシーン等でそういったコンシエルジュ的な能力がより一層要求されると思う。

「わかりやすく解説する」という需要

これからの世の中では今まで以上に、池上彰さんや林修先生、あるいは田原総一朗さんや大前研一氏、ホリエモン(堀江貴文氏)のような「わかりやすく解説する」需要が高まると思います。未来の教育プログラムでは、有り体に言えば “ロボット・AIと人とを結びつける” ノウハウが意外と重要視されると思いますし、もちろんこれは学校教育であると同時に、社会教育の分野かもしれませんね。

※参考資料:
人工知能、Wikipedia、最終更新2015年10月07日
東日本大震災における死者・行方不明者の推移、Wikipedia、最終更新2015年03月18日
生産年齢人口6000万人割れに -2040年の日本、衝撃のシミュレーション【1】、PRESIDENT Online、2014年01月08日
コンシエルジュ、Wikipedia、最終更新2015年11月24日

 ※コンピュータが仕事を奪う、新井紀子(著)、日本経済新聞出版社、2010年

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