教育コンテンツと社会・生活

「教育コンテンツと社会・生活」という記事のタイトルがちょっと堅苦しいのですが、つまりは「学校で教えている教育が、いかに社会の出てからも役に立つか」、を考えたいと思います。これは実はかなり難しい問題で、大人でも「学校の勉強なんて、社会に出てから何の役にも立ちはしない」、とうそぶく人も多い。これはなぜか。

スマホも教育カリキュラムのかたまり(?)

実は学校で学ぶカリキュラムは全て、現実社会のバッググラウンドに潜んでいます。「潜んでいる」というのが厄介な点で、普段の生活ではなかなか気がつかない。例えば、皆さんが手にしているスマートフォン(スマホ)。これは言わずもがな、数学・物理学・電子工学・プログラミング理論という理科系の“学び”を元に作られています。

いやそれだけでなく、経営学・経済学・法学などの社会学系とも密接に関わっています。iPhoneに至っては、スティーブ・ジョブズ氏が学んだ哲学やカリグラフィー(書体デザイン学)、さらには仏教をはじめとする様々な宗教・思想・文化・芸術など、実に多くの“学び”が内包されています。特にカリグラフィーの影響は大きい。


ただ、使っているユーザーは全く気づかない。このようにあらゆる経済・社会現象の“裏”には、「学校で教えるカリキュラム」が隠れています。それもかなり密接に・・・。でも、これが気がつきにくいし、気がつかなくても日常生活になんら問題ありません。こういう状況で、下記の2パターンの発想が生まれます。

① 学校の勉強なんて、社会の出た後、「直接的」には役に立たない。だから、不要だ。
② 学校の勉強は、社会の出た後、「間接的」に役に立つ。だから、いざというときに役に立ちやすいし、人生をグランドデザインする際にも役に立ちやすい。

教育カリキュラムはOSみたいなもの

上記2つはどちらも正しい。つまり、現代の人間にとって、基礎的な教育カリキュラムは、コンピューターでいうOS(オペレーティングシステム)みたいなものです。無意識のうちに役に立っている。もちろん、Windowsの中に使われない付属ソフトがあるのといっしょで、全てが役に立っているわけではありません。しかし、その人間の可能性というか自由度というか「互換性」というか・・・そういったものが養われ、高まる。

ここに、学校教育のプレゼンスがある。

先日、獣医をしている私の友人が「数学なんて、学んでもあまり役に立たないよ」と言っていました。獣医なので、数学IIと呼ばれるカリキュラムで学ぶ方程式や関数あたりを中心に勉強してきたのですが、仕事には役に立っていないと言うのです。しかし、これは間違っている。

一つは、無意識のうちにその友人は数学を活用していると思う。薬の処方にしても、外科手術にしても、様々なシーンで陰で数学が役に立っているはずです。二つ目に、数学を積極的に使えばさらに効率的になる仕事の手順・分析などを、たぶん意識的に活用していないのでしょう。パソコンのOSが陰で適切に動いていて、でもフルに活用されていない感じです。

ここが学校教育カリキュラムの活用が難しいところで、基礎的な教育カリキュラムは非常に普遍化・一般化された内容なので、スペシフィックな場面にどう当てはめれば良いのか、わかりにくい。でも、あらゆる職業の人々が、例えば、心の中で証券会社の金融ストラテジスト的(?)な視点を持てば、「数学」を使って俯瞰的な視点に立てる、と思う。こういう発想をする人は、意外と人生を長期的に楽しめる、とも思う。

数学と中日ドラゴンズとシリコンバレー

例えば、プロ野球の監督が数学が得意だと、安定して結果を残せる。中日ドラゴンズの落合博満・元監督など、その典型でしょう。下記動画ですが、あの名将・野村克也氏がその鋭い観察眼で、「落合は数学が得意」とズバリ指摘しています。


また、ネット塾的に言えば、広く学校教育の場で、現実社会の(広義の)成功者の経験やノウハウ・考え方を、動画授業などを通じてうまく導入するのもいいかもしれない。下記はGMOインターネットの熊谷正寿会長の動画なのですが、これを見た中学生ならば「英語や数学、社会の勉強はかなり重要だな」、と感じるはずです。


※後編はこちら >> kigyoka70 GMOインターネット 熊谷正寿会長 【後編】

まぁ、熊谷会長自身は高校中退で米国シリコンバレーに乗り込んだクチなので、ちょっと逆効果かな?とも正直思いますが、彼の経験と見解はすこぶる素晴らしい。こういった社会で活躍する方々、しかもできればある程度若い層の方々の経験値を、学校教育のカリキュラムにリンクさせる。そうすることで子どもたちは、「学校の勉強」と「社会に出てからの生活」を無意識にリンクするでしょう。

学校と社会との垣根が低くなる

教材としては、学習ビデオオンデマンドのmanebi(マネビ)あたりも、参考にするにはもってこいかもしれません。一応、manebiはビジネスを対象にしていますが、形態としては“教えたい側”と“学びたい側”をつなぐオープンプラットフォームです。すなわち、双方向性を重視するeラーニングサービスなので、柔軟性も高く、将来的な“学び”のノウハウの成長も期待できます。学校教育コンテンツとの親和性もあると思います。



こういった試みなどを通じ、「教育コンテンツと社会・生活」を縦横無尽に結びつけることは、教育システムを硬直化したものから、時代に合った柔軟性のあるものに変えていく。IT(ICT)技術やネット塾的なノウハウを用いれば、十分可能でしょう。そして、学校、特に義務教育と社会との垣根が適度に低くなることで、社会全体にも中長期的に良い影響がもたらされると思います。

※参考資料:
スティーブ・ジョブズ、Wikipedia、最終更新2014年09月25日
数学II、Wikipedia、最終更新2013年12月11日
落合博満、Wikipedia、最終更新2014年08月19日
熊谷正寿、Wikipedia、最終更新2014年09月23日

   

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