「学歴よりも、学力が大切だよね。商人として、学ぶ力ですよ。店の経営、営業や製品などの知識、お客さんとのやりとりや駆け引き、税金や法律も勉強しないといけない。しかも、続けることが大事。会社員は、この学ぶ力が弱いね。守られすぎているからじゃないですか」
近藤義治・有限会社コーエイ商会社長。神奈川県川崎市高津区にある、有限会社コーエイ商会代表取締役の近藤義治さん(67)が太く低い声で語る。自転車やバイクなどの部品をメーカーから買い、自転車販売店やバイク販売店などに売る、卸売りの店だ。・・・
※学歴より学力! なぜ「学ぶ力」が大切なのか あなたの「学歴」を教えてもらえませんか?、PRESIDENT Online、2014年12月24日
実学の大切さ
以前、経営共創基盤CEOの冨山和彦さんが、文部科学省の有識者会議で同じような発想で、大学改革を提言していました。「トップ大学以外は職業訓練校へ」という提言です。これは実学の大切さを主張している話ですが、上記のコーエイ商会社長の考えと一致しています。
私もこれには賛成で、人文科学・自然科学・社会科学・芸術その他のあらゆる学問領域は、何らかの点で「現実世界」に貢献しなければいけない、と思う。
一番わかりやすいのは、学問が商売・産業に直結するケースです。簿記会計やマーケティング等がそうであるのは当然です。他にも例えば、カリグラフィー(西洋書道)を学んだスティーブ・ジョブズ氏が、MacintoshやiPod・iPhone・iPadを世に送り出しました。まさに「学問と産業」のつながりを示す典型です。
ジョブズ氏はリード大学をドロップアウトし、もちろんそのこと自体は褒められたことではありませんが、そこから先が彼の真骨頂。彼はリード大学に残り、哲学やカリグラフィー等を聴講し続けたそうです。中退したので学費もかからず、もぐりの学生としてガッツリ勉強した。
学力重視
「学歴よりも、学力が大切だよね。商人として、学ぶ力ですよ」。コーエイ商会の近藤社長は真実を言い当てている。ネット塾系やMOOCなど、eラーニングも盛んになり、「学歴重視」から「学力重視」に切り替わる。あくまで「学歴」がチェックされるのは、「学力」の指標として、という色彩がより強くなる。TOEICテストのスコアが、語学力(英語力)の指標となっていますが、それと同じようになる。
ある意味、ごまかしが効かない厳しい時代に突入します。その流れから、学歴パワーのあるブランド大学も、広い意味での実学志向が強まり、「うちは学歴だけじゃない。真の学力を付けられるカリキュラムも用意していますよ」とアピールしてくるでしょう。
例えば、あの東大(東京大学)でさえ、ユーグレナ(ミドリムシ)で金儲けに勤しむ時代です。株式会社ユーグレナは東大農学部の学生だった出雲充さんと鈴木健吾さんが2005年に始めたバイオベンチャーですが、いまや資本金48億円の東証1部上場企業です(証券コード2931)。
ちなみに、「金儲けに勤しむ」ことはいい意味で言っています。「金儲けに勤しむ」ことは、「机上の空論に勤しむ」の数百倍、数千倍の価値があります。ユーグレナの例を挙げるまでもなく、日本のアカデミズムも良い時代になってきたと、個人的には感じています。
※参考資料:
・冨山和彦、Wikipedia、最終更新2014年10月31日
・トップ大学以外は職業訓練校へ、ネット塾ジャーナル、2014年12月19日
・センター試験廃止で思考力アップ?、ネット塾ジャーナル、2014年12月23日
・スティーブ・ジョブズ、Wikipedia、最終更新2014年12月21日
・TOEIC|コミュニケーション英語能力を測る世界共通のテスト
・株式会社ユーグレナ – ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の研究開発・製造・販売
・大学入試の新共通テスト、英語にTOEFL活用も、日本経済新聞、2014年10月24日