SankeiBiz(サンケイビズ)に、“「ネット予備校」活況” についての記事が載っていました。
大学受験対策の授業の動画をインターネット配信により低料金で手軽に見られる「ネット予備校」ビジネスが活況だ。受験生にとってスマートフォン(高機能携帯電話)などがあれば、いつでも授業を受けられるのが人気の理由。
リクルートは今年3月、受験生向け無料会員サイト「受験サプリ」内に月額980円で、動画配信された授業を受け放題の受験基礎講座を開設し、すでに約1万人の会員を獲得した。対する大手予備校は高付加価値をアピールしており、ネット予備校生の獲得争いが過熱してきた。・・・
※SankeiBiz(サンケイビズ)、那須慎一氏、2013年06月18日、引用・リンク
この那須氏の記事では、「ネット予備校」(ネット塾、オンライン予備校)について、①IT化や競争激化で価格が大幅に下がりつつある、②講師や教材もこなれてきた、という2点がまず書かれています。
①の価格に関して言えば、例えば、リアルな塾や予備校では、人件費や不動産費用などの固定費がかかるのに対し、ネット予備校の場合、「スタジオで授業を収録し、配信するだけのシンプルな仕組み」(SankeiBiz)なので、固定費がほとんどかからない。
モチベーション維持が課題
そして、実はとても大事なのですが、3つ目として那須氏は生徒のモチベーション維持にも言及しています。ここはとても重要な点かもしれません。
・・・秀英予備校は、ネットを活用した自宅学習コース「秀英iD予備校」を08年から提供。・・・「コミュニケーションボード」と呼ぶ専用の質問投稿システムを用意。学習以外にも入試情報や進路について気軽に担当者と相談できる体制を整え、双方向性という付加価値で差別化を図る。・・・
「昔より受け身姿勢の子供たちが増える状況下ではフェイストゥフェイスの重要性は続き、(ネット予備校は)あくまでも補完という位置づけは変わらないのではないか」と日本総合研究所の手塚貞治主席研究員は指摘する。・・・
※SankeiBiz、引用
この手塚氏の指摘は鋭い。増える「受け身姿勢の子供たち」という、まさに少子高齢化を背景にしたドンピシャな指摘です。
日本の現状は老大国・プチ温室
日本の現状はこうです。ある程度の社会インフラが整い、それなりに高い教育水準があり、高齢者が増え、子供たちが少ないという人口構成です。おまけに大陸系の国々と違い、島国という “海” という自然の防波堤を持つ環境であり、だいたい同じような考えを持つ(準)単一民族が、韓国や台湾に比べれば多めの1億2000万人が住んでいます。
戦後68年経ち、日本は元気はないが、“全体的には” それなりに平和に過ごせるプチ温室だと思う。今の日本で育つ子どもたちが「受け身姿勢」になるのは、無理はない。
もともと日本人は島国の住民なので、(アメリカなどに比べ)社会が狭く、失敗しても行くところがないので、リスク回避の傾向があった。そこに現在の、少子高齢化である。子どもが少なく、すなわち兄弟も少なく、親も社会も、「親の介護なんて心配するな。失敗してもかまわない。世界市場でリスクを取れ。」・・・みたいな強気なアドバイスを言いにくい。一人っ子も多いでしょう。
20世紀の「老大国」はイギリスでしたが、今は間違いなく日本です。極論すれば、だんだん滅び行く老人国家ニッポン国で、教育を受ける数少ない子どもたちは受け身な姿勢にならざるを得ない。これは社会構造的な問題だと思う。
※ ※ ※
さて、その受け身姿勢の子どもたちに、通信教育である「ネット予備校」(ネット塾)が、どう勉強のモチベーションを与えるのか。例えば、秀英iD予備校は「双方向性」を強化するといった独自の企業努力をしています。しかし、ネット塾全般的にみてモチベーションの問題は、かなり難しい問題です。このネット塾のウィークポイント、すなわちモチベーションの維持が難しいという点は、今後のネット塾の大きな課題の一つでしょう。
※参考資料:
・「ネット予備校」ビジネス活況 ネットで授業見放題、参入相次ぐ、SankeiBiz(サンケイビズ)、那須慎一氏、2013年06月17日
・スマホで授業見放題 低価格「ネット予備校」活況 月額980円のサービスも、ITmediaニュース、2013年06月17日